柿の種

柿の種

講演の口調

ラジオなどで聞くえらい官吏かんりなどの講演の口調は一般に妙に親しみのないしかつめらしい切り口上が多くてその内容も一応は立派であるがどうも聴衆の胸にいきなり飛び込んで来るようなものが少ない。

ある会議の席上である長官がある報告をするのを聞いていたとき、ふと前述の講演のタイプを想い出した。

長官はその属僚の調べ上げてこしらえた報告書を自分のものにして報告しなければならない。それで文句はわかってもその内容は実はあんまり身にしみていないらしいので、それでああいう口調と態度とが自然に生まれるのではないかという気がした。

これに反して、文士でも芸術家ないし芸人でも何か一つ腹に覚えのある人の講演には訥弁とつべん雄弁の別なしに聞いていて何かしら親しみを感じ、底のほうに何かしら生きて動いているものを感じるから妙なものである。

学者の講演でもやっぱり同じようなことがあるようである。

空腹はなかなか隠せないものらしい。